阿部浩之&家長昭博という川崎Fの+α。優勝に多大な貢献、勝負強さ発揮した新戦力 - サッカー魂

阿部浩之&家長昭博という川崎Fの+α。優勝に多大な貢献、勝負強さ発揮した新戦力

阿部浩之&家長昭博という川崎Fの+α。優勝に多大な貢献、勝負強さ発揮した新戦力 2017/12/5(火) 10:30配信 フットボールチャンネル 阿部浩之&家長昭博という川崎Fの+α。優勝に多大な貢献、勝負強さ発揮した新戦力 川崎フロンターレのMF家長昭博(左)とMF阿部浩之(右)。ともに今季から川崎Fでプレーし、リーグ優勝に貢献した【写真:Getty Images】  川崎フロンターレが奇跡の大逆転劇で悲願の初タイトルを獲得し、幕を閉じた今シーズンの明治安田生命J1リーグ。大宮アルディージャに5発を見舞う快勝で鹿島アントラーズに勝ち点で並び、得失点差で追い抜いた2日の最終節。60分に生まれた、リードを3点に広げるキャプテンのFW小林悠のゴールは、長くフロンターレを支えてきたMF中村憲剛と小林が築いた土台に、今シーズンから加入したMF阿部浩之とMF家長昭博とが完璧に融合した結晶でもあった。(取材・文:藤江直人)

【Jリーグ】登録選手・加盟クラブが支払った代理人報酬ランキング 阿部浩之&家長昭博という川崎Fの+α。優勝に多大な貢献、勝負強さ発揮した新戦力 2017シーズンの明治安田生命J1リーグを制した川崎フロンターレ【写真:Getty Images】 ●成長の跡が凝縮された3点目

 時間にして13秒。その間に延べ8人の選手がプレーに絡み、最後はキャプテンのFW小林悠が鮮やかなスライディングボレーを叩き込んだ大宮アルディージャ戦の3点目に、川崎フロンターレが今シーズンを戦いながら遂げてきた成長の跡が凝縮されていた。

 大宮アルディージャをホームの等々力陸上競技場に迎えた、2日の明治安田生命J1リーグ最終節。自陣深くから出された相手の縦パスを、競り合ったFWマテウスに何ひとつ仕事をさせることなくDF谷口彰悟がはね返す。この時点で時計は58分48秒を指していた。

 前線へ送られた浮き球をMF茨田陽生と競り合いながら、MF中村憲剛が右足によるワンタッチパスで前方の小林へ通す。相手に囲まれながらも確実にボールを収めた小林は、右へポジションを移していた中村へボールを預ける。

 中村には茨田、センターバックの高山和真、左サイドバックの和田拓也の3人が引きつけられる。さらに中村の右側を、DFエウシーニョがトップスピードでオーバーラップしていく。アルディージャの選手たちのほとんどが、中村とエウシーニョの動きに目を奪われていた。

 相手の心理状態を見越した中村が、すかさず逆を突く。ボールをキープしながらくるりと反転して、左サイドで誰にもケアされていなかったMF阿部浩之へパス。このとき、MF家長昭博が相手ゴールに背を向けた状態でさらに左側へ、右手でスペースを指さしながら走り出していた。

 アルディージャの陣形はすでに崩れかかっていた。右サイドバックの奥井諒が阿部の、センターバックの山越康平がパスを受けた家長を慌ててケアするも、ともにワンテンポずつ遅れてしまう。

「スペースへ抜けたらパスを出してくれたので、あとは自分の判断で上げました」

 ゴールから遠ざかるコースを走りながら、体を強引にねじるかたちで家長が利き足の左足を振り抜く。自身と最終ラインの間を狙われた低く速いクロスに、アルディージャのGK加藤順大は飛び出せない。この間、家長がゴール前を見たのはほんの一瞬だけだった。

「普段練習でやっていることが試合で出た感じでしたね。あまり見ていなかったですけど、信じてクロスを送りました」

●8人の選手がボールに関与した13秒間

 アルディージャのゴール前は、必然的に守りが薄くなっていた。家長からクロスが送られてくることを察知したのか。小林は一瞬のスキを突いてマークされていた高山から離れて、ポッカリとスペースが空いていたファーサイドへ流れていく。

 次の瞬間、以心伝心でクロスへスライディングしながら飛び込む。直前でワンバウンドする難しい状況だったが、ボールが弾んだ直後に右足を巧みに合わせ、ゴールへ流し込んだ。加藤もただ見送るだけの美しすぎる連係から、アルディージャの戦意を完全に萎えさせる3点目が生まれた。

 ゴールネットが揺れた時点で59分1秒。谷口から数えて延べ8人の選手が関与した13秒間で、相手に一瞬たりともボールを触らせない完璧なゴール。この瞬間にゴール数を「22」に伸ばし、得点王争いでFW杉本健勇(セレッソ大阪)に並んだ小林は真っ先に家長のもとへ駆け寄った。

 眩いばかりの笑顔が弾む。前半終了間際の2点目に続いて、小林のゴールをアシストした家長も表情を崩す。ピッチを離れれば寡黙な家長と抱き合った際にこんな言葉を耳打ちされたと、試合後の取材エリアで小林が明かしてくれた。

「アキ君(家長)が『絶対に悠があそこにいてくれると信じていた』と言ってくれたので。本当に完璧でしたね。崩し方も最高でしたし、アキ君には本当に感謝したいですね」

●勇気とパワーを与えたに違いない先制ゴール

 阿部と家長。前人未踏の3年連続得点王を獲得したFW大久保嘉人がFC東京に移籍し、約4年半にわたって独特のパスサッカーを掲げてきた風間八宏監督(現名古屋グランパス監督)も退団。鬼木達監督がコーチから昇格した、新生フロンターレに加わった新戦力だ。

 もっとも、フロンターレに確固たる土台があった分だけ、フィットするのに時間がかかった。たとえば阿部。試合後のヒーローインタビューで「ようやく馴染めました」と絶叫し、等々力陸上競技場の爆笑を誘ったのは、ゴールデンウイーク中に行われたアルビレックス新潟戦だった。

 生まれも育ちも関西で、明るく陽気な性格の阿部にとって半分は受け狙いで、半分は本気だった。流れるような連係から小林のゴールをアシストした後半5分のプレーに、痺れるものを感じたのか。試合後の取材エリアでは、こんな言葉を残している。

「フロンターレらしいゴールだと自分のなかで思えたのが、悠君の2点目が初めてだったので。その意味で馴染めたかなと」

 言葉通りに、以降は水を得た魚のように攻撃陣のなかで躍動。ガンバ大阪時代には年間7ゴールが最高だった男が、28回目の誕生日だった7月5日の浦和レッズ戦で、キャリアハイとなる8ゴール目をゲット。そして、最終節でも開始わずか47秒で大仕事をやってのけた。

 右サイドからドリブルで切れ込んできたエウシーニョからパスを受けると、落ち着き払った体勢から左足を一閃。強烈な弾道でアルディージャのゴールを撃ち抜いいた。

 8月13日の鹿島アントラーズ戦以来となる一発で、ゴール数もついに二桁に乗せた。奇跡の逆転優勝を遂げるには、まず目の前のアルディージャに勝たないことには始まらない。それだけに、開始直後の先制点はフロンターレに勇気とパワーを与えたはずだ。

「自信もあったので、思い切って打ちました。それがチームを勢いづけることにもなったので、本当によかったのかなと。川崎にとっての初タイトルに貢献できたことは非常に価値があるし、僕自身もチャレンジするためにここへ来たので、その意味ではしっかり成長できたと思う」

●「彼らのおかげで優勝できたと思うし、本当に感謝しています」(中村憲剛)

 ガンバ時代の2014シーズンには、国内三冠を独占したチームで主役の一人を演じた。勝者のメンタリティーを知る前線の仕事人は、EAFF E-1サッカー選手権2017に臨むハリルジャパンにも初選出され、4日から都内で始まった代表合宿で新たなチャレンジを開始している。

 開幕戦に出場した後はけがで長期離脱を強いられた家長は、阿部以上にフィットするまで時間を要した。復帰してもピッチ上で噛み合わない状況が続いた。もがき苦しんでいるのがはっきりとわかった。ちょうどチームも上向きに転じていたこともあり、中村はこんな言葉を残していた。

「徐々に、徐々に、ですね。アキ自身のポテンシャルの高さは疑いようがないし、アキがフィットするのを待つ余裕が、いまのウチにはある。(時間の経過とともに)アキの特徴を引き出してあげればいいし、周りも特徴を感じてあげられればいい」

 移籍後初ゴールをあげたのは、くしくも阿部が9点目をあげた8月13日のアントラーズ戦。リザーブの選手たちを含めて、まるで優勝したかのような祝福の輪がピッチに広がった。それだけ家長が苦しんでいることを、周囲もわかっていた。

 以来、2列目の右サイドを定位置としながら、家長は神出鬼没の動きで前線において躍動。フロンターレに欠かせない一人となり、最終節では3アシストをマークした。

「優勝できたことが一番だし、やっぱり優勝するために来たので」

 思いを短い言葉に込めた31歳は、フィットするまでに長い時間を要した1年をこう振り返った。

「そういうことを含めて移籍であり、そういうのを求めてチャレンジしたと思うので」

 ボールを止めて蹴る。相手のマークをはがす。相手の考えの逆を突く――。風間前体制から変わらないコンセプトを、フロンターレにおける在籍期間に関係なく、阿部と家長を含めた今現在のピッチ上にいる全員で共有した末に生まれた後半15分の小林のゴールに、起点となった中村も声を弾ませる。

「あの2人もすごく苦しんでいたと思うけど、フィットしてからはこれ以上頼もしい選手たちはいないくらいの活躍をしてくれた。アキも阿部ちゃんもけがで離脱していた時期があったけど、その間は僕や悠で何とか踏ん張って、という感じで。彼らのおかげで優勝できたと思うし、本当に感謝しています」

 天皇杯ですでに敗退しているフロンターレの2017シーズンは、悲願の初タイトルを獲得したJ1最終節で幕を閉じた。見る側を唸らせ、楽しませ、そして感動させられる極上のコンビネーションの続編は、小休止するのが惜しいという思いを残しながら、連覇をかける来シーズンへと引き継がれる。

(取材・文:藤江直人) フットボールチャンネル

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