オランダ代表、凋落の因果。国際舞台で競争力低下、暗黒時代脱出のために必要なこと - サッカー魂

オランダ代表、凋落の因果。国際舞台で競争力低下、暗黒時代脱出のために必要なこと

オランダ代表、凋落の因果。国際舞台で競争力低下、暗黒時代脱出のために必要なこと 10/21(土) 9:10配信 フットボールチャンネル オランダ代表、凋落の因果。国際舞台で競争力低下、暗黒時代脱出のために必要なこと 2016年のEUROに続いて2018年のW杯出場を逃してしまったオランダ代表【写真:Getty Images】  オランダ代表が苦しんでいる。昨年のEURO出場権に続き、来年のロシアW杯出場権も逃してしまった。強豪と呼ばれていたのはほんの数年前。ヨーロッパの予選で苦しみ、W杯への切符をつかめないほどの低迷に至ったのはなぜだろうか。これは暗黒時代の始まりなのか、それとも一時的なものなのだろか。(取材・文:中田徹【オランダ】)

【W杯欧州予選 順位表】強豪オランダは敗退。スペインとイタリアが同居するグループGの行方は? オランダ代表、凋落の因果。国際舞台で競争力低下、暗黒時代脱出のために必要なこと オランダのW杯予選敗退後、現地誌『フットボール・インターナショナル』は表紙が真っ黒だった【写真:中田徹】 ●「オランダはフットボールの小国になった」

『フットボール・インターナショナル』誌の10月12日号は、まるで喪に服すかのように、表紙が真っ黒だった。そこにはKNVBのシンボルであるライオンと「オランダはフットボールの小国になってしまった」という白抜きの文字だけがあった。

 2010年南アフリカW杯で準優勝、2014年ブラジルW杯で3位に輝いたオランダ代表はこの4年間で一気に凋落し、2016年EURO、2018年ロシアW杯と2大会続けてビッグイベントへの道を断たれてしまったのだ。

 巻頭言で同誌のクリスチアーン・ルーシンク編集長はロッベンの後継者不在を嘆く。

「オランダ代表のアイコンだったルート・クロルが1983年、欧州選手権の予選で負けて代表を引退した時、すでにロナルド・クーマン、ルート・フリット、マルコ・ファン・バステン、ビム・キーフト、フランク・ライカールトといった次世代の選手たちが育っていた。それはフランク&ロナルド・デ・ブール兄弟、フィリップ・コクー、パトリック・クライファルトの時代が終わる時にも同様で、ラファエル・ファン・デル・ファールト、ウェスリー・スナイデル、ロビン・ファン・ペルシ、アリエン・ロッベンが次の時代を引き継いでいった。そして今は静かだ。悲しいくらいに静かだ」

 一方、「タレントはいる」と記したのは、現在は評論家として活躍するロナルド・デ・ブールだ。

「ユスティン・クライファルト、マタイス・デ・リフト、ドニー・ファン・デ・ベーク、フレンキー・デ・ヨング(以上、アヤックス)、ケニー・テテ(リヨン)、ティモシー・フォス・メンサー(クリスタル・パレス)、メンフィス・デパイ(リヨン)、アンワル・エル・ガジ(リール)、スティーブン・ベルフワイン(PSV)、リシェドリー・バズール(ウォルフスブルク)、リック・カルスドルプ(ローマ)。そして、残念ながら今は重傷を負ってしまったけれどカルバン・ステングス(AZ)といったタレントがオランダにはいる」

●有望なタレントが「ブレイクする」ということ

 しかし、彼らタレントが「現れる」のと「ブレイクを果たす」ことには大きな差があることをロナルド・デ・ブールは指摘する。

「ブレイクするということは、高いレベルでコンスタントに結果を出し続ける選手のこと。例えばクリスティアーノ・ロナウド。彼は若い頃からハイレベルのプレーをしていたが、今もなお、より相手にとって脅威になろう、より良くなろうと自己投資をし続けている。オランダのタレントたちはベーシックなクオリティを持っている。そして、そこから次のステップを踏まないといけない。技術、戦術、フィジカルに留まらず、メンタル面でも一層の成長が必要だ。それが果たせれば2022年のW杯でオランダ代表は本当に良いチームになると思う」

 ルーシンク編集長は「次世代のタレントがいない」と嘆き、ロナルド・デ・ブールは「タレントはいる」と主張する。しかし、欧州のビッグクラブ、ビッグリーグのクラブは常にオランダ人の若手選手をスカウトして買っていくのだから、きっかけさえ掴めば、中には「ブレイクする」だけのタレントはいるのだろう。こうした意味では、オランダの育成指導者は相変わらず一定のレベルを保っているのではないだろうか。

 深刻なのは、プロサッカーリーグのレベルで国際的に通用する指揮官が、オランダからいなくなってしまったことだ。

 オランダ代表の監督の名前を2008年秋から並べていくと、ベルト・ファン・マルワイク、ルイ・ファン・ハール、フース・ヒディンク、デニー・ブリント、ディック・アドフォカートと並ぶ。監督としての実績に乏しかったブリントは例外かつ論外として、ここ10年、「超」の文字がつくベテラン指導者ばかりが名を連ねている。

 ロナルド・クーマンがエバートンで苦しんでいる今、欧州の舞台で信頼を集めているオランダ人指導者がどれだけいるかと言えば、アヤックスをEL決勝に導き、ドルトムントでロケットスタートを切ったペーター・ボスぐらいのものだろう。  

 今、オランダのクラブはチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグでの存在感をなくしている。そのことは、オランダ人指導者たちがヒリヒリするようなハイレベルな舞台で、戦術プラン、選手交代などの采配、チームのフィジカルやメンタルのピーキング、勝負勘などを養う機会を逸しているとも言える。これまで多くのタレントが表れてはブレイク出来なかったことと、国際舞台で通用する指導者が表れてないことには因果関係があると思うのだ。

●顕著な指導者不足。次期監督は? 希望は来年開幕の新リーグに

 ロナルド・デ・ブールはオランダ代表の次期監督について、こう記している。

「アドフォカート現監督は、アシスタントコーチを務めていたルート・フリットに任せたいようだ。その場合、ルートにはエリック・テン・ハーフ(現ユトレヒト監督)のような戦術コーチをつけないといけない。ルートがこれを飲まなかったら、自分なら外国人指導者から探してみたい。とりわけトーマス・トゥヘル(無所属)、ユリアン・ナーゲルスマン(ホッフェンハイム)といったドイツの新世代の指導者たちだ。しかし、実際には彼らは毎日トレーニングピッチに立つクラブ向けの指導者のように思える。代表チームの監督ならフィリップ・コクー(現PSV監督)はひとつのオプションになるだろう」

 来年3月に予定されているイングランドとの親善試合はアリエン・ロッベンの代表引退セレモニーを兼ねることが濃厚だ。「ビッグ4(ロッベン、ファン・ペルシ、スナイデル、ファン・デル・ファールト)+1(カイト)」の時代が完全に幕を閉じる。次のスーパースターが現れるまで、オランダ代表はよりグループ戦術を重要視し、コレクティブに戦い続ける必要がある。

 今回のW杯予選では敗退に終わったオランダだったが、最後のスウェーデン戦で2-0の勝利を収めたことにより、来年9月からスタートするUEFAネーションズリーグのディビジョンA(トップリーグ)に滑り込んだ。つまりUEFAに加盟する55の国と地域のうち、オランダはトップ12というエリートグループに入ったのだ。

 もちろん、オランダはその中のアンダードッグだ。それでも、相手チームだってオランダと戦うのはいつも不気味だろう。UEFAネーションズリーグが始まる11ヶ月後には、暗黒時代に陥ったオランダサッカー界の喪が明けていることを祈りたい。

(取材・文:中田徹【オランダ】) フットボールチャンネル

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